

『褪色 -森の枝と日用品-』
時間とともに色褪せる。
ほとんど誰も気に留めることの無い、でももしかしたら、ほんの僅かの誰かの目に留まることがあるかもしれない、そんな物たち。
店の一角の小さな小さなスペースで、ドライの枝物と古雑貨の販売を始めました。
―森の枝
私たち夫婦は、数年前から親族の山を預かっています。
山の手入れをしていた親族がひとり、またひとりと鬼籍に入り、誰も入らなくなった山はあっという間に荒れ果ててしまいました。
今では夫が少しずつ手入れをしてくれていて、私も、少しずつ山に入るようになりました。
植物オンチ、植物無知の私。
山に生きている植物のことを知るたび、とても新鮮で、とても面白く感じるのです。
そしてその植物を試しにドライにしてみたら、またそれもとても楽しかったのです。
私は花屋ではないし、生け花やフラワーアレンジメントの知識もありません。
“ていねいな暮らし”の概念とは遥か彼方のところで生きている人間です。
言うなればここは、「山の管理人の直売所」
山から素敵になりそうな素材を見つけ、採り、自然乾燥させたものを並べています。
皆さんの暮らしの中で、素敵に活かしていただければ幸いです。
“きれいに色を残す”ことよりも、時間とともに自然に変わる『褪色』を楽しんでいただければ、と思います。
私たちが入っている山のふもとには、私が育った一軒家があります。
家の周りは違う家の持ち山。
どの家も少しずつ山の管理をする人がいなくなり、山の様子を見に来る人もほとんど無く、我が家史上最大の『山に飲み込まれそう危機』が訪れています。
割と冗談抜きに、死活問題な状況です。
仕方がないことです。山の面倒を見るのは本当に本当に、本当に大変なこと。
でも、「自分ちの山も、もしかしてちょっと面白いかも?」と思って、ちょっと足を運んでみようかな…と思う人がひとりでも増えたら。
山に人の気配が増えれば、歩くところの草も少しは減るかもしれないし、筍を掘れば竹の進出も、動物天国も少しだけ抑えられるかもしれない。
私は、ただ面白がっているだけ。
山の中で見つけた小さなものを、誰かに渡せたら。
誰かがそれを、少しでも面白がってくれたら。
そして、本当におこがましい以外の何物でもないですが、誰かが自分ちの山のことを思い出すほんの小さなきっかけになったら――と思います。
―古雑貨
小さな頃から、時間をかけて古びていった物にとても惹かれました。
祖母のウールのコート。
飴色になった木製品。
ペンキの飛び散りが蓄積された床。
手近な物で修理された小家具。
歪みのあるガラス。
開かない木枠の窓。
珈琲染みの付いたテーブル。
時間とともに、また生活の積み重ねとともに色褪せていった物。
誰かにとってはもう捨てる物が、私には唯一無二の素敵なものに見えてワクワクするのです。
そんなモノを。
まずは、いつの日か機会があれば…と昔から集めていたものを中心に。
年月と生活の蓄積 ―染みや塗料、剥げ、錆など― もひっくるめて、
どなたの心にひっかかるものがあれば幸いです。
※古物のお持ち込みは受け付けておりません。
※古物商許可取得済です。